令和3年度税制改正

令和3年度税制改正の概要

 令和3年度税制改正は、ウイズコロナ、ポストコロナの経済再生、国際的に立ち遅れているデジタル社会の実現、中小企業への支援などについて、税制でのテコ入れを中心としています。

【1】法人税関係(青色申告法人に限る)

 法人税関係では、産業競争力強化法の改正を前提とした脱炭素化の高い先進的投資やデジタル環境の構築のための設備等への投資を支援する税制として設備投資に対する特別償却や税額控除制度が措置されました(デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設、カーボンニュートラル投資促進税制の創設)。また、厳しい経営環境にあっても企業の研究開発投資を一層促進させるため研究開発税制における税額控除限度を引き上げ、さらにクラウド環境で提供するソフトウエア試験研究にかかる費用も研究開発税制の対象としました。また、コロナ禍での雇用を守るため、給与の引き上げ等を行った場合の税額控除制度では、賃上げよりも新規雇用を重視した改正が行われています。これらの施策の多くは大企業向けのものといえますが、中小企業でも活用できる施策がたくさん盛り込まれています。以下、中小企業等を中心とした施策のうち、主なものをご紹介いたします。

(1)中小企業者等の試験研究費等の特別控除制度(中小企業技術基盤強化税制)

 中小企業者等の研究開発を支援する制度として、投下された試験研究費用の一定割合の税額控除を受けることができる制度が拡充されました。

(2)中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却(中小企業投資促進税制)

 中小企業者等が、1台160万円以上の機械装置、1台120万円以上又は1台30万円以上のものの年度合計額120万円以上の検査測定工具、一式70万円以上のソフトウエア、貨物運搬車(車両総重量3.5トン以上)を取得し、事業の用に供した時、取得価額の30%の特別償却ができます。(令和5年3月31日まで延長)

  ※税額控除制度(資本金3000万円以下の法人のみ適用可能)との選択適用(取得価額の7%、
   法人税額の20%を限度とします)ができます。

(3)中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却(中小企業経営強化税制)

 中小企業等経営力強化法の経営力向上計画の認定を受けた法人が、経営力向上設備等(機械装置、測定検査工具、器具備品、建物附属設備、一定のソフトウエア)に該当するもののうち、一定規模以上のものを国内で指定事業の用に供した場合、取得価額を特別償却として100%の即時償却ができます。(令和5年3月31日まで延長)

  ※税額控除制度との選択適用(取得価額の7%、資本金3000万円以下の特定中小企業者の場合は10%、
   法人税額の20%を限度とします)ができます。   

(4)少額減価償却資産の即時償却

 従業員500人以下の中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合には、全額(事業年度合計300万円を限度)を即時償却できます。(令和4年3月31日まで)

(5)中小企業者等の所得拡大促進税制(一定の高額所得法人を除きます)

 当期の雇用者給与等支給額が、前期の雇用者給与等支給額の1.5%以上増加している場合、その増加額の15%の税額控除(法人税額の20%を限度)を受けることができます。またその増加割合が2.5%以上のときで、一定の教育訓練費を支出しているなどの要件を満たすときは、上乗せ特例としてその増加額の25%の税額控除(法人税額の20%を限度)を受けることができます。

【2】所得税関係

 所得税関係では、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について、特例措置が置かれました。

 消費税率10%への引き上げに対する反動減対策として措置された控除期間13年間の措置が、新型コロナウイルスの経済への影響を考慮し、床面積基準や所得要件を一部見直したうえで、2年間延長されました。

  ※新築の場合は、令和3年9月30日までの契約、既存住宅の場合は、令和3年11月30日までの契約で、
   令和4年12月31日までに入居した場合に限ります。

 10年間⇒13年間(11年目から13年目につき、ローン残高1%と税抜購入価額×2%÷3の少ない方を税額控除できます)

【3】贈与税関係

贈与税関係では、主として次のような手当てがされました。

(1)住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税措置の拡充

 新型コロナウイルスの影響による先行きの不透明さを背景として、住宅への投資に対する贈与税の非課税措置が拡充されました。直系尊属から贈与を受けた20歳以上(その年1月1日現在)の者で、合計所得金額が2000万円以下※のものが、住宅用家屋の取得等について一定の要件を満たすときは非課税限度までの金額について贈与税が課税されません。

  ※家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、合計所得金額が1000万円以下となっています。

 非課税限度額は以下の通りです。新築等契約日が、令和2年4月1日~令和3年12月31日までの場合、消費税率が10%適用されるときで、省エネ等住宅ならば1500万円、それ以外の住宅ならば、1000万円となります。

(2)教育資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税措置の見直しR5.3.31.まで)

 30歳未満で前年合計所得金額が1000万円未満の者が、教育資金に充てるため、その直系尊属から信託銀行などに金銭の信託を受けた場合、1500万円までの金額については、贈与税は課税されません。この制度については、受贈者が30歳に達した時に残額がある場合、その残額に対し贈与税が課税されます。また、それまでに贈与者が死亡した時は、受贈者が23歳未満であるときや在学中であるときを除き、相続開始時の残額を相続税の課税対象とします。

(3)結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税措置の見直し(R5.3.31.まで)

 18歳以上(令和4年4月1日前は20歳)50歳未満の者で前年合計所得金額が1000万円未満の者が、結婚・子育て資金に充てるため、その直系尊属から信託銀行などに金銭の信託を受けた場合、1000万円までの金額については、贈与税は課税されません。結婚・子育て資金とは、婚礼費用、妊娠・出産、育児に要する費用などをいいます。この制度について、受贈者が50歳に達した時に残額がある場合、その残額に対し贈与税が課税されます。また、それまでに贈与者が死亡した時は、相続開始時の残額を相続税の課税対象とします。

【4】その他、納税環境整備として、次のような見直しがされました。

(1)税務関係書類における押印義務の見直し

 税務関係書類については、原則としてすべての提出書類につき、押印義務がなくなりました。但し、実印の押印と印鑑証明書の添付が必要なものは除かれます。

(2)電子帳簿等保存制度の見直し 

 経済社会のデジタル化を踏まえ、経理事務の電子化による生産性の向上、テレワークの推進、クラウド会計ソフトの活用による記帳水準の向上に資するため、帳簿書類の電子的保存に関する手続きを簡素化しました。帳簿の保存及び受領する請求書・領収書の電子保存につき、税務署長の事前承認を不要としました。また一定の要件を満たす電子帳簿はそのまま電子データとして保存することも可能となり、信頼性の高い電子帳簿については一定のインセンティブが付与されました。請求書・領収書については、2カ月以内のタイムスタンプ付与と原本スキャナ保存により紙原本を破棄することも認められました。