主な令和5年度税制改正

(1)消費税の改正(インボイス制度の見直し)

  事業者の事務負担等に配慮して、インボイス制度が次のように緩和されました。

① 全事業者が対象

1万円未満の値引返品等について、返還インボイスを交付する必要がなくなりました。入金額から差し引かれた振込手数料を値引き処理する場合なども、返還インボイスの交付は必要ないということになります。

この規定に適用期限はありません。

② 基準期間における課税売上高が1億円以下等の事業者が対象

課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合は、一定事項を記載した帳簿の保存のみで、インボイスの保存がなくても仕入税額控除が認められます。

令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間の課税仕入れが対象となります。

③ 免税事業者がインボイス発行事業者になった場合等が対象

売上に係る消費税額の2割を、納付税額とすることができます。

計算例 税込課税売上高 880万円の場合

    880万円のうち、消費税額80万円

    納付税額 80万円×20%=16万円

対象期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間ですが、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税期間などは、この特例は適用できません。

④ 申請の柔軟化

令和5年10月1日からインボイス発行事業者の登録を受けようとするにあたり、申請期限の令和5年3月末より後に申請する場合であっても、9月30日までは、期限までの申請を困難とした事情の記載がなくても登録申請が可能となりました。

(2)法人税関係の改正

 各種特例の期限が次の通り延長されました。

① 中小企業者等の法人税の軽減税率の特例

年800万円以下の所得金額に対する税率 本則19% → 特例15%

改正前 令和5年3月31日まで → 改正後 令和7年3月31日まで

② 中小企業投資促進税制

一定規模の機械等に設備投資 → 特別償却30% or 税額控除 7%

改正前 令和5年3月31日まで → 改正後 令和7年3月31日まで

③ 中小企業経営強化税制

経営力向上計画の認定を受けた一定規模の設備投資 → 即時償却 or 税額控除 7%又は10%

改正前 令和5年3月31日まで → 改正後 令和7年3月31日まで

(3)相続税、贈与税関係の改正

 ① 相続時精算課税の改正

(a) 暦年課税の基礎控除110万円とは別途、相続時精算課税に対する基礎控除110万円が創設され、両者は併用可能となりま す。

(b) 相続時精算課税の贈与者が死亡した場合の、相続税の課税価格に加算する贈与財産の金額は、(a)の基礎控除額を控除した残額です。

※ これらの規定は、令和6年1月1日以後の贈与から適用されます。

② 暦年課税に係る3年内贈与加算規定の改正

(a) 暦年課税の贈与財産を相続税の課税価格に加算する期間が、相続開始前3年間から7年間に延長されます。

(b) 延長した4年間の贈与財産のうち、総額100万円までは相続財産に加算されません。

※ これらの規定は、令和6年1月1日以後の贈与から適用されます。

③ 贈与税の非課税措置の延長

(a) 教育資金の一括贈与の非課税

改正前 令和5年3月31日まで → 改正後 令和8年3月31日まで

(b) 結婚子育て資金の一括贈与の非課税

改正前 令和5年3月31日まで → 改正後 令和7年3月31日まで